長岡京市の各小学校では放課後や土曜日など、子どもたちがいろんな体験ができるようにと、放課後子ども教室『すくすく教室』が開催されています。その中で長岡第十小学校の『すくすくキッズテン』をご紹介したいと思います。こちらの小学校のすくすく教室は、今から18年前である2007年に発足し現在もたくさんの子どもたちが利用しています。
*この記事は、市民ライターが企画・取材・執筆しています。
6教室からスタートした、すくすくキッズテン
現在25歳の私の息子は小学2年生からすくすくキッズテンに参加するようになりました。初めて参加したのは囲碁教室。同じ地域に住むおじいちゃん先生でした。はじめは全く知らない人だったのに、日曜日に自治会館で開催している囲碁の集まりにも呼ばれるようになり交流させてもらっていました。すくすくキッズテンのおじいちゃん先生となぜか休日まで一緒にいた息子です。今考えてみると安心感と信頼がないとできないことですね。
子どもたちは好きな教室を選べます。最近の人気のある教室はダンス。その次には意外にも、将棋や百人一首が根強い人気となるようです。日本の伝統的なものが人気なこともなんだかうれしく思います。各教室を担当している指導員さんの大半が、その地域に住んでいる方たちです。得意なことを次の世代に伝えていく様子もとても素敵なことだと思いますね。そんなすくすくキッズテンは、地域の方々との繋がりが現在も拡大しながら続いていき、今では年間250教室程が開催されているそうです。
見守るひとがいる安心感
役員代表の西村日出男さん。朝の登校時には毎日橋の上で子どもたちの見守りもしてくださっています。子どもたちが安心して参加できる理由のひとつが、毎朝見かける知っている大人がいること。昨今、いろんな事件などもあり地域との繋がりが薄くなりがちです。すくすくキッズテンの存在は、子どもたちと地域に住む親世代・祖父母世代までを繋ぐ大きな役割もあるのだと思います。
西村さんの、この活動に対する想いは「子どもたちに経験の場を提供し、いろんな大人と交流してもらうこと。指導者はできるだけ地域に住む方でみんなが知り合いで安心して暮らせる地域にしたい」とのことでした。18年間も続くこの教室、西村さんの想いは叶っていますよね。
放課後がくれる小さな自立の機会
私がすくすくキッズテンを素晴らしい取り組みだと思う理由のひとつが、子どもたちが自分で教室を選び、親に報告し、決まった時間にその場所へ向かい、参加していく仕組みが出来上がっていることです。
親から離れ、学校の授業ではない場所で、時には怒られながらでもルールを守って参加する。一見、簡単なようであっても『自分で選び、実行していく』ことは大人であっても不安だし、怖いものです。
その先に見える、子どもたちの成長の芽
現在25歳になる息子は小学生の頃は走ることが苦手で、スポーツ全体に苦手意識があったように感じています。
そんな息子がこのすくすくキッズテンで出会ったスポーツが『卓球』です。「上手だね!すごいね」と言ってもらい、自分自身も卓球が面白い!!と思った息子は一度参加してからは、習い事のように卓球教室に通い、中学生になり高校生になっても全力で取り組むことができました。
自分に自信がつくということは素晴らしいことで、小学校を卒業と同時に、自分で外部の卓球教室を探してきて「ここに通いたい!習わせて!」と親に交渉してきました。子ども自身が熱量をもって取り組める何かを見つけることができたのもこの教室がきっかけです。知らない世界を体験し、自分で考え行動できる子どもになる。その小さな『芽』もここで見つけてきたような気がします。
指導員・先生・サポートをしてくれる みなさんの努力と地域の力
すくすくキッズテンの縁の下の力持ちといえる人たちがいます。役員代表の西村さん、会計1名・庶務4名の6名の役員のみなさん。学期始まりの調整会にて、すくすくキッズテンの日程・実施教室を確定し、子どもたちに予定表を配ります。
1年生から6年生までの参加希望を集い、集計し、各担当教室の指導員にご連絡。今でこそ当たり前のようにされている作業ですが、この仕組みを作ることだけでも大変だったと思います。
すくすくキッズテンの当日は各教室の指導員と、お手伝いとしてサポートに入って頂く方と共に、子どもたちと同じ時間を過ごします。指導員は、子どもたちのために自分の時間を使い、スポーツやもの作り、文化を伝えながら子どもたちと楽しく活動しています。
1年生はいまでも、校舎の中で教室がわからず迷うこともあるようです。定期的に行う調整会で問題になったことをシェアして改善していく。校舎で迷わないように教室情報を掲示するなど、子どもが安心して参加できる仕組みを作ってくれています
教室の持ち時間は60分もしくは120分となります。時には、子どもたちが飽きてしまったり、子ども同士の喧嘩が始まってしまうこともあるようです。けれど、その経験も子どもたちには学びの時間となります。その教室に飽きたとしても『自分で選び参加したから、最後までルールを守って最後までやる』ということも身をもって知ることができます。喧嘩をしたとしても、大人が間に入り収めてもらえることで人間関係での対応も学べているのかもしれません。
親でもない、学校の先生でもない大人との関わりで子どもたちには自分で選び、行動し、自分のことをきちんと考えていく力を育んでくれるのが放課後子ども教室『すくすく教室』だと思っています。今回の取材で、保護者として当事者だった頃には気づけなかった、学校や地域の力で子どもたちが生かされていると改めて気づくことができました。
『地域の力を発揮して、子どもたちとふれあい、文化と伝統を伝える』ことを想いに込めて活動しているのが長岡第十小学校のすくすくキッズテンです。これからもずっと続いてほしい取り組みですね。
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市民ライタープロフィール
小林志保
現在25歳息子・20歳娘のお母さん。子どもたちは長岡第十小学校の卒業生です。
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