火災、救急、災害…もしもの時に頼れるプロフェッショナルたち ~長岡京消防署 ~

日常の中で突然起こりうる火災や事故、そしてさまざまな災害。そんな緊急事態に駆けつけ、私たちの生命や暮らしを守ってくれる長岡京消防署の方々は、一体どんな思いで日々の訓練に励み、厳しい現場に立ち向かっているのでしょうか? 

今回は市民の頼れる存在である、長岡京消防署で「はたらく人」たちの素顔と、その仕事への情熱に迫ります。


私たちの安全を守る砦。長岡京消防署の組織と役割とは

市民の安全を支える2つの拠点

緊急時に最前線で消火や救助活動にあたる消防署の方々。その拠点となるのが、京都府長岡京記念文化会館の北側に位置する「長岡京消防署」と、JR長岡京駅から東へ徒歩10分ほどの場所にある乙訓消防組合消防本部庁舎1階の「東分署」です。


消火だけじゃない!消防署の多様な仕事

消防署の仕事は、火災現場の「消火」だけではありません。交通事故現場での「救助」、急病人に対応する「救急」といった最前線の活動に加え、火災原因の「調査」や火事を防ぐ「予防」、組織を支える「事務」まで、多様な専門家が活躍しています。

あらゆる現場に対応する救助工作車(手前)と、乙訓で唯一、高所活動を担うはしご車(奥)


専門チームで対応!代表的な4つの課・係

これらの業務を担う代表的な部署とその役割は、以下の4つ。

①庶務予防課:火災予防運動・消防署の予算管理・消防団事務 など
②警備係:消火活動・火災調査活動・消防訓練指導 など
③救助係:消火活動・救助活動 など
④救急係:救急活動・救命講習・各種救急に関する広報 など

こうしたさまざまな役割が連携し、24時間体制で迅速に対応できる仕組みが整えられています。


24時間体制でもしもの時に備えるその仕事内容とは?

交代制勤務と日々の業務

消防署の隊員たちは、3つの班による交代制で、24時間体制で私たちのまちを見守っています。
当番の日は、朝8時30分に前日のチームから任務を引き継ぐことからスタート。まず行うのは、車両や資機材に異常がないかの入念な点検です。万全の状態を整えた後、出動要請に即応できる態勢を維持しつつ、日中は厳しい訓練や事務作業に時間を費やします。

また、過酷な現場は体力勝負でもあるため、隊員は待機時間も活用し、署内のトレーニングルームで自主的に体を鍛えています。


過酷な現場を支える署内設備

24時間勤務中、隊員たちは食事や入浴、仮眠など、生活のすべてを署内で完結させます。
お風呂は少し大きめで、3人ほどが一緒に入れるサイズの浴槽。火災現場などでは、体に泥や煤煙、発がん性物質などが付着することもあるため、それらを一刻も早く洗い流すために、この広さが必要なのです。


救助技術を磨くための日々の訓練

取材に訪れた日は、年に一度の「全国消防救助技術大会」に向けた訓練の真っ最中。地下やマンホールでの災害を想定した花形種目、「引揚救助」を見学しました。

これは5人1組で、塔から降下した2名が要救助者を確保し、地上の仲間と協力して引き上げるまでの一連の動作で、その安全性とタイムを競う競技です。
体に極度の負担がかかる訓練であるため、1回1回に懸ける気迫に、圧倒されてしまいました。

厳しい訓練の過酷さを物語る、豆だらけの手。この努力が、市民の安心へとつながっている


119番通報から出動まで。現場の裏側

全ての始まりは、一本の119番通報から。しかし、パニックになった通報者から、的確な状況を聞き出すのは至難の業です。「限られた情報から現場の状況を瞬時に判断し、最適な部隊を編成します」。そう語るのは、指令室や指揮隊の経験を持つ庶務予防課の上田晋太朗さん。

出動にかかる時間は、わずか1分。防火服への着装は、30~40秒で完了させなければなりません。

「時短のため、靴とズボンを一体化させておき、一気に履けるように工夫しています」と上田さんが教えてくれました。
防火服だけで約10kg、さらに空気呼吸器などを装着すると、総重量は20kg超。その重装備をものともせず、隊員たちは緊急車両へ乗り込みます。

こちらは指令室から送られてくる指令書。車内でチーム全員が指令書に目を通し、現場の状況と取るべき行動を瞬時に共有。わずかな時間で、最適な救助プランを組み立てるのです。

「もし通報する際は、できるだけ冷静に。例えば事故なら、車の破損状況やけが人の状態など、詳細な情報が多いほど、より迅速で的確な救助に繋がります」と上田さん。

また、119番通報は、たとえ通話の途中であっても、状況が把握でき次第、消防や救急の部隊に出動指令が出されます。そのため、焦らず、落ち着いて情報を伝えることが、迅速な救助へと繋がるのです。

私たちの冷静な119番通報が、救助の貴重な一秒を生み出す第一歩となります。


なぜこの仕事を選んだのか? 〜現場で働く人々の声〜

消防署の方たちは、なぜこの仕事を選んだのでしょうか? 今回は消防官のお二人に、そのきっかけや、働くなかで感じたこと、今後の目標などについてお伺いしました。


【救命救急士 尾崎修一さん】「この人が自分の家族だったら」と思いやりを胸に

大学で学んだ救急救命士の資格を「一番活かせるのは、緊急時に真っ先に駆けつける救急隊の仕事だ」と感じ、この世界へ飛び込みました。消防官として採用されたのが、昨年の4月です。
現場に出て痛感するのは、長岡京市の地域特性です。交通量の多い幹線道路が近いため交通事故が多く、また「子育てのまち」としてお子さんが多いため小児救急も頻繁にあります。あらゆる年代の命に向き合う、知識の奥深さが求められる仕事ですね。

どんな時も「この人が自分の家族だったら」という想いを胸に、思いやりを忘れないこと。それが私の信条です。過酷な現場の不安やプレッシャーも、何でも話せる先輩方に相談して乗り越えており、この人間関係には本当に恵まれていると感じます。

まだ新人なので、今は一日も早く救急車を運転する「機関員」になることが目標です。地元なので主要な道は分かりますが、救急車が通る最短ルートは一本裏の道だったりします。プロとして、あらゆる道を網羅する必要性を実感しており、地理の習得には特に力を入れています。今後は機関員の資格取得はもちろん、経験の少ない新生児への対応といった課題も、一つひとつ着実に乗り越えていきたいですね。


【消防司令 山本隆広さん】「我々が逃げたら誰が行くのか」20年間の使命感

高校時代のケガで多くの人に助けられた経験が、私の原点です。「将来は人の役に立ちたい」。その一心で消防官を志し、特に災害現場の最前線で人命を救う“救助隊”に強く惹かれました。

救助隊の任務は、専門知識や技術、そして極限状態での判断力と心身のタフさ。隊長として現場を指揮する立場として、要救助者の命と、部下である隊員の安全、その二つを守ることを常に胸に刻んでいます。隊員一人ひとりの特性を活かし、的確な救助を行うために日々の訓練と対話を重ねること。それが、絶対的な信頼関係に繋がると信じています。

忘れられないのは、能登半島地震への災害派遣。倒壊した家屋を目の当たりにし、本当にこれが現実なのかと、言葉を失いました…。過酷な現場で痛感したのは、日々の地道な訓練の積み重ねが持つ、本当の大きな意味です。

20年の活動の中、これまで心が折れそうな時も何度もありましたが、「私たちが逃げ出してしまったら、現場に誰が行くのか…」。そう思うと、諦められません。「人のために」という初心が、今も私を突き動かしています。

私のやりがいは、住民の方からかけていただく「ありがとう」という温かい一言に尽きますね。大きな目標はありません。ただ、一日一日をしっかりこなし、今日を無事に終え、明日を迎えること。その地道な積み重ねこそが、自分とチーム、そしてこのまちの消防を強くしていくのだと、そう信じています。


プロが教える「命の守り方」。今日からできる3つの備え

①救急要請は的確に。迷ったらすぐ相談

命に関わる症状(呼吸停止、大量出血、意識不明など)の場合は迷わず119番通報を。ですが、緊急性があるか判断に迷う場合は「#7119(救急安心センターきょうと)」「#8000(小児救急電話相談)」、または「全国版救急受診アプリ(Q助)」などを活用してください。専門家からのアドバイスが受けられ、救急車の適正利用にも繋がります。


②家庭の火災リスク、再点検を

火災発生時にいち早く異変に気づくためには、住宅用火災警報器が効果的です。長岡京市の火災警報器設置率は83.3%と高めですが、必要な場所に全て設置されているのは49.5%。さらに定期的な点検は多くの方が実施できていません。設置することで安心するのではなく、正常に作動することを確認することが大切です。
また、近年、スマートフォンなどに使われるリチウムイオン電池からの火災事案が増加しています。火災防止のためにも、取り扱いや廃棄方法を改めて見直してください。


③大災害では「自助」が基本。今すぐ準備を

もし、南海トラフ地震のような大きな災害が起きたら…。消防車や救急車は、たくさんの場所へ同時に向かうため、あなたの元へすぐに到着できないかもしれません。
そんな、いざという時に本当に頼りになるのが、「自分自身で備える力(自助)」と、「家族やご近所さんと助け合う力(共助)」です。そのため避難所までの経路を定期的に歩いて確認することや、個人に合わせた非常持ち出し袋の準備を心がけてください。
火災や災害、救急の場面では、ちょっとした日ごろの備えが自分や家族の命を守ることにつながります。


長岡京消防署とともに育む、まちの安心

24時間体制で長岡京市を見守る消防署は、もしもの時に頼れる心強い存在です。今回の取材を通して、その安全は、隊員の方々の力強い活動と、私たち市民一人ひとりの防災意識が手を取り合うことで、より確かなものになるのだと改めて感じさせられました。
日々の私たち一人ひとりの小さな心がけが、地域全体の大きな安心へと繋がっていくのかもしれません。


乙訓消防組合消防本部

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