京都・長岡京紅葉ライトアップの舞台裏・スゴ腕庭師のその心に迫る

秋の京都観光、夜のお楽しみといえばやはり紅葉ライトアップですよね。長岡京市で今秋ライトアップされるのは、学問の神様でお馴染みの「長岡天満宮」と花手水(はなちょうず)がSNSで大人気の「柳谷観音」です。柳谷観音は初ライトアップイベントということで期待感も高まっています!

柳谷観音と長岡天満宮の庭師・梅野星歩(せいほ)さん(株式会社梅鉢園)は、なんと!柳谷観音の花手水が爆発的人気となるきっかけを作ったアドバイザーでもあります。どんなお方なのか気になりますよね??今回特別にインタビューをしてきました!!

取材は10/22の祝日、柳谷観音で行いました。当日の花手水は、天皇陛下の御即位奉祝と、ワールドカップで活躍した「ラグビー日本代表のユニフォーム」にちなんでいるんだとか。美しいですね!


京都・紅葉ライトアップ長岡京の2大スポット

長岡天満宮「錦景苑」(きんけいえん)2019.11/22(金)~12/8(日)

阪急長岡天神駅から徒歩10分、学問の神様・菅原道真公を祀る長岡天満宮。こちらには紅葉狩りのために作られたお庭とも言われる日本庭園「錦景苑(きんけいえん)」があります。

回遊式庭園になっているので庭園内を歩いて様々な角度から紅葉を眺めるのもよし、苑内の四阿(あずまや)に腰掛けて紅葉を仰ぎ見るのもよし。さらには本殿へと続く階段を上り、絵馬殿から錦景苑を見下ろせば、紅葉の雲海が眼下に広がり趣もひとしお。

Information長岡天満宮ライトアップ11/22~12/8まで16時30分~20時、見学無料/境内map


柳谷観音「浄土苑」2019. 11/8(金)、11/15(金)、11/22(金)、11/23(土)4日間20名限定

京都の奥座敷に佇む柳谷観音は「目の仏様」として1200年の歴史を持つ寺院です。阪急長岡天神駅、西山天王山駅、JR長岡京駅からタクシーで10~15分。

近年、SNSでは“花手水の寺”として話題ですが、昭和を代表する作庭家の重森美玲(しげもり みれい)が古都百選に選定した名庭・浄土苑(京都府指定名勝庭園)があることでも知られています。

柳谷観音では今年、初となるライトアップイベントを開催。4日間各日20名限定で申込制、料金は御朱印付き2500円。照明デザイナーの小川ユウキさんが手掛けます。昨年、関係者のみで試験的に行ったライトアップが大好評だったとか。本当に楽しみ~!

柳谷観音のライトアップは、光が主役となる華美な演出ではなく、庭園の美しさそのものを引き立たせる光の演出が特徴です。

山の傾斜を巧みに利用した浄土苑は、陰影を意識しながら丁寧に光を配置することで、夜ならではの立体感が現れるよう趣向が凝らされています。

静寂な雰囲気の中、幽玄の世界に浸ってみるのはいかがでしょうか。

Information柳谷観音ライトアップ2019年は11/8(金)、11/15(金)、11/22(金)、11/23(土)4日間20名限定/17時30分~18時30分※参加受付は16時まで/2500円(御朱印付き)

▶予約はコチラから ※11/23は満席

長岡京市出身の庭師・梅野星歩さんインタビュー SNSで花手水が爆発的にヒットした理由に迫る!!

庭師が教える紅葉鑑賞ポイント

―――本日は、どうぞよろしくお願いいたします。今回のインタビューのために、柳谷観音のご住職さまから特別に上書院をお借りしました。

梅野さん(以下同):よろしくお願いします。「即位礼正殿の儀」のおめでたい日に、特別なお部屋をお借りできるなんて嬉しいことです。

―――こちらは毎月17日の縁日や2019.11/2~12/1までの柳谷観音紅葉ウィークなど期間限定で入ることができるそうですね。映画「日本のいちばん長い日」のロケ地として使用したことがきっかけで一般公開されるようになったそうですが、上書院から眺める庭園(浄土苑)も素晴らしいですね。

はい、本当に。浄土苑の眺めは3層になっていて、一層目は書院から山肌に広がる庭を見上げる景色。また階段を上って向かう上書院の1階が二層目、2階が三層目と、変化に富んだ3つの景色に出合うことができるんですよ。

―――上書院の2階からはどのようにお庭を見るのがおすすめですか?

窓の際に座らず、ちょっと中の方へ入っていただく方がいいですね。趣のある建物と紅葉、山の稜線と、人工物と自然が融合するからこそ生まれる美しさです。

京都の庭師が語る歴史ある観光名所(寺社仏閣)が抱える深刻な問題

―――まだ紅葉してませんが、本当に美しい景色。カエデやモミジに手が届きそうなほど近いですね。

間近で幹をご覧いただくとわかると思いますが、実は木が弱ってきています。冬場に肥料を与えて養分を吸収させるように手入れをしているんですが・・・。いかにして寿命を延ばしていくのか、苦心しているところです。

一方で次の世代をどうやって育てて行くかも課題です。長岡天満宮のキリシマツツジや光明寺の紅葉も同じ問題を抱えています。

―――それは深刻な問題ですね…。解決策はあるんでしょうか?

解決までの道のりは長いですが、まずはたくさんの方に庭をご覧いただいて、庭の価値を理解していただくことが大事だと思っています。それが支援にも繋がってくると思うんですよね。ただ社会の価値観が劇的に変化している大きな流れの中で、庭もこれからの時代に合うものを考えていかないと。先人達はそれをずっとやってきたので、僕らがどうやって未来に繋げていけばよいのかと…今、いろいろと壁にぶちあたっています。

“グローカル”な視点で、ニューヨーク公演など多彩な活動も

―――梅野さん、高校時代はラガーマンだったそうで?

はい、そうなんですよ。ラグビー部の後輩たちが日本代表で活躍している姿に勇気づけられました。

長岡京に本店を置くウニールのオーナー・山本尚さんはラグビー部の先輩で、「長岡京から世界へ」と世界を飛び回っておられて刺激をいつもいただいてます。そういったご縁もあり以前にウニール本店の物販棚を作らせていただいたこともあります。

―――家具も制作されるんですね?存在感のある素敵な物販棚だと思っていました。

こちらの棚は「版築(はんちく)」という古来の土木技術を使っています。有名なところでは、万里の長城や法隆寺。それに長岡京を造営したときにも版築の技術で塀や壁を作っていたことから、本店が長岡京市にあるので、現代風のデザインにアレンジして同じ技術で作らせてもらいました。

―――今年はニューヨークへ庭師として講演に行かれたとか?

はい、日本の伝統産業を担う一員としてNYへ行きました。皆さんとても熱心に聞いてくださって。庭園が持つ普遍的な美しさは言葉なしでも伝わるんだと実感しました。国や宗教を越えて。芸術と同じです。

―――今、一番力を入れている活動はなんですか?

「庭師×エックス」、簡単に言うとコラボです。様々な方とコラボした地域プロジェクトを行っています。先日、スマホ疲れした目を癒すため「眼力ヨガ」のイベントを柳谷観音でやったり、また地元のタケノコ農家さんとコラボして楽しく放置竹林を減らすためにメンマを作ったり、竹籠を編んだりです。

後継者不足や少子高齢化、シャッター商店街など世の中にはいろいろな社会問題があります。問題を抱えた人が集まれる、交流の場を作るきっかけづくりができればいいなと思います。

―――梅野さんにとって庭師のお仕事って庭を見る人をただ癒すだけでなく、さまざまな手段でもって癒しを提供することなんですね。

自然と対峙する中で芽生えた「庭師」という道

―――庭師を目指したそもそものきっかけは?

祖父が農業の先生をやっていたので幼いころから自然に触れる機会が多い環境で育ちました。僕が16歳の時、母親が亡くなってしまい…。その時、漠然と人の命ってなに?人生ってなに?これだけ自然科学や医療技術、学問が発達しても補えない悲しみってなんなのか?と、思い悩んでいた高校生時代、母のお墓参りで柳谷観音へよく訪れていました。

柳谷の自然と対峙する中で、言葉にならない答え(もしかすると「癒し」)を追い求めていたのかもしれません。その後、もやもやとした気持ちのまま、大学に進学し造園の勉強を始めます。それがきかっけなのかなと思いますね、いま改めて振り返ってみると…。


上書院の階段を登り切ったところにあるこのツバキ(写真矢印)。割れて皮だけになって朽ちてしまっても一生懸命生きています。生命力をすごく感じますよね。こういったところも庭師としてはご覧いただきたい。

SNSで花手水がバズった最大の理由は「人への思い」

―――いろいろとお話をおうかがいしていると梅野さんは人の痛みに寄り添って問題を解決する、いわば「人の心を癒す」プロですね。仕事で心がけていることは?

お施主さんの思いに寄り添うこと、自然をよく観察すること、歴史や伝統を大切にすることです。庭師なので木の枝を切ったり、肥料を与えたり、虫がついたら予防したりそういった庭のメンテナンスはもちろんのこと、長岡京の仕事では1300年という重みのある歴史の中の1ページを紡いでいるということを常に意識しながら仕事に取り組んでいますね。

―――今年、柳谷観音の「あじさい祭」は“花手水”をお目当てに5000人もの参拝者が殺到したそうですね。ご住職から「梅野さんのアドバイスでさらに人気が出た」とおうかがいしました。伝統や歴史を踏まえた上で、一緒の立場になって考えてくれることに感謝しているとおっしゃっていましたよ。

ご住職と奥様が一番大切にされているのが、「心の安らぐ空間を作っていきたい」という思いなんです。

花手水と同じく「水琴窟(すいきんくつ)」も柳谷観音の心の安らぐ空間の一つです。こちらは目の観音様なので目の不自由な方もたくさんお参りに来られるため、見えずとも心の目で感じていただきたいとの思いから「心琴窟(しんきんくつ)」と命名しました。

水琴窟は、茶人&庭づくりの名手でもあった小堀遠州が古田織部(武将&茶人)へのサプライズで作ったものと伝わっています。今も昔も「人への思い」がイノベーションを起こすのだと思っています。

▶詳しい心琴窟のエピソードはコチラから

―――すごい!まるでBGMのようで癒やされます。ずっと聞いていたい。最後に今後の目標を教えてください

庭師の仕事を通じて、それぞれの時代に生きる方々の生活を豊かにする、そして平和に繋がるようなお手伝いができたらいいなと思います。その中で価値を生み出し、また今後も海外へ向けて“僕にしかできないこと”を発信できればと思います。

―――本日はお忙しい中ありがとうございました。ぜひ、みなさん、柳谷観音へお越しください!癒しの効果、ほんとスゴイですよ^^

Information 株式会社梅鉢園

柳谷観音(揚谷寺)紅葉ウィーク11/2~12/1

撮影:菊地佳那(梅鉢園)/三宅徹(紅葉ライトアップ写真)

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