長岡京の女性アーティストが作り出す「ドールハウス」の世界を探訪!

小さなものを目の前にすると、人はどうして心ときめくのでしょう? たとえば、近頃人気の粘土細工のミニチュアフードは、実際に味わうことはできないのに、眺めているだけで不思議と心が満たされますよね。

そんなミニチュアの集合体ともいえる「ドールハウス」を多数手がけ、SNSでも話題の作家さんがなんと長岡京市に! 近く個展を開催予定の「Space7」にお越しいただき、ドールハウスの魅力や楽しみ方を伺いました。

「ドールハウスとミニチュア展」は11月12日(金)〜16日(火)の5日間開催予定。こんな感じで写真を撮って楽しむのもおすすめです♡

ミニチュアのかわいさと超絶技巧に脱帽!

今回お話を伺ったのは、長岡京市在住で「atelier CLOSET(アトリエ クローゼット)」を主宰するドールハウス作家の木和瞳(きわ ひとみ)さん。

制作歴25年以上の大ベテランですが、2017年頃まではオープンな活動を控え、自宅のクローゼットを改造した小さな作業場でコツコツと作品づくりに勤しんできました。アトリエの名前も、そこに由来しています。

「こちらは、今度の個展に出品予定のドールハウスです。今はパン屋さん仕様になっていますが、壁や床のプレートを取り替えて、まったく雰囲気の違う空間に作り替えることができるんですよ」

そう言って木和さんが披露してくれたのは、「KISEKAE∞ROOM」と名付けたシリーズ作の一例。ひと目見た瞬間、「何これ、スゴイ!カワイイ!!」「ずっと眺めていたい〜!」と口走ってしまうほど、造りが細かくセンスも抜群です。

ずらりと並んだパンはもちろん、什器や備品もすべて、木和さんの手作りなんですよ。正直、人間業とは思えません……!

ドールハウス制作に欠かせないという道具類も見せていただきました。ピンセット、絵筆、ハサミ、ニッパーなどの工作用品は、いずれも小ぶりで先端も極細・極薄のものが中心。
彩色後に自然な風合いを施すための顔料や、1/100グラム単位で計量できるデジタルスケール(秤)といったアイテムも必須なのだそうです。

なぜこんなに繊細な道具類が必要なのかというと、ドールハウスは基本的に実物の1/12スケールで作るという決まりがあるからです。たとえば、直径10cmのパンをミニチュア化するなら、10cm÷12=0.83cm(8.3mm)の大きさに仕上げる計算になります。

パンのように同じ形のものを複数作る場合は、あらかじめ用意したシリコンの型で「量産」できるそうですが、一つひとつ手作業で彩色する手間を合わせると、本物のパンを作るよりも大変かもしれませんね。

(キャプション)極細ワイヤーを編み上げたバスケットや、ブリキ版を加工して作ったホットプレートなど、どれも本物そっくりの出来栄え!

小さな世界に憧れて、自ら創造主に

木和さんがドールハウスに目覚めたきっかけは、1980年代に発売されたミニチュア玩具「シルバニアファミリー」なのだとか。

「人形サイズのインテリアやおうちまで展開されていて、どれも欲しくてたまらなかったんですけど、親には買ってもらえなくて……。その頃からミニチュアへの憧れがあった気がします」。

元々、絵や工作が得意だった木和さんは、地元・大分県にある美術専門の高校に進学。その頃たまたま手にしたホビー雑誌で、ヨーロッパ発祥の「ドールハウス」の存在を知り、「自分で作れるんだ!作ってみたい!」と見様見真似で制作に挑み、記念すべき第一号作品『It’s a little world』を高校の制作展に出品したのだそうです。

「小さいものって無条件にかわいくて、ワクワクしますよね。それを自分で作り上げた時の達成感が忘れられなくて……」。京都の芸大へ進学してからも、木和さんの創作意欲は高まる一方でした。

スペースの限られた学生マンションでも飾っておけるようにと、ガラステーブルの天板の下に収まるドールハウスを独自に考案し、専門誌に大きく取り上げられたことも。住環境の制約を逆手に取ったドールハウスの見せ方・楽しみ方は、今回見せていただいた「KISEKAE∞ROOM」にも通じている気がしました。

3人の子育てに追われた20年近くの間は、家族を最優先に細々と創作活動を続けてきた木和さん。そこに転機が訪れたのは3年ほど前、SNSを頻繁に利用するようになってからです。
「Instagramで作品を発表されている作家さんたちに触発されて、わたしも軽い気持ちで始めてみたのですが、反響の多さと細かいところまで見てくださっていることに驚きました。たくさんの刺激をもらい、自然と創作に打ち込めるようになりました」。

想像力を掻き立てる、ドールハウスの魅力

木和さんの作品に共通するテーマは「わたしが好きなもの」。洋風でも和風でも、こんなシーンが作りたいという「ひらめき」と、それをカタチにする時の「バランス」が何よりも大切だと言います。

雛人形をメインにした和風ドールハウスもそのひとつ。「お雛様だけではなんとなく淋しいな」と感じ、咄嗟にひらめいたのがひな壇の傍らに置かれた吊るし飾りです。

お子さんのために本物の吊るし飾りを作ろうとして挫折したことがあるそうですが、ミニチュアのほうは見事な出来栄え。実物大よりミニチュアのほうが得意って、”ドールハウス作家さんあるある”なのでしょうか⁉︎

ドールハウス作家さんの多くは、はじめにスケッチや設計図を描き、それに沿って作業を進めていくそうですが、木和さんは設計図などを用いず、頭の中にある構図を具現化していくスタイル。

イメージ通りにいかない時は、ロケハンに出かけたり、資料を漁ったりして、自分が納得いくまで探究するそうです。
そうした取材を通して物事の歴史や実態を理解できるのも、ドールハウスをつくる醍醐味のひとつだと言います。

一番楽しい瞬間は?とたずねると、「やっぱり、最後にパーツを並べていく時ですね」とにっこり。実際、先ほどのパン屋さんのセットから、お嫁入り前のレディのお部屋へ模様替えをお願いした時も、終始楽しそうに作業されていました。

出来上がったレディのお部屋、乙女ゴコロがくすぐられますよね〜!
ドールハウスは「人形の家」と直訳されるように人形を用いてもよいのですが、木和さんはあえて人形を置かず、さまざまなミニチュアをバランスよく配しながら、ストーリー性に満ちた世界を生み出しています。
ウェディングドレスがあって、その隣にはミシンがあって……この娘さんは愛する人を思いながら自分でドレスを縫い上げたんだなぁ、お相手はどんな人なのかなぁ〜なんて、どんどん想像が膨らんできます。
ドールハウスがヨーロッパ貴族の子どもだけでなく、世代や国境を超えて広まったのは、誰にも束縛されない自由な世界がそこにあるからではないでしょうか?

(キャプション)パン屋さんから一転、花嫁のお部屋に様変わり。明かりを灯した夜のシーンも素敵ですね♪

愛でる楽しみ、作る喜びを伝える“アウトプット”に意欲!長岡京市で人生初の個展を開催

SNSの追い風を受けて加速した木和さんの創作活動は、今、新たな転機を迎えようとしています。
「今までは自分のレベルアップのためにインプットするばかりでしたが、これからはアウトプットにも力を入れていきたい」と、人生初の個展開催を決意
来たる11月12日(金)〜16日(火)の5日間、セブン通りに面したレンタルスペース「Space7」にて、初期から現在までの約10作品を展示する「ドールハウスとミニチュア展」が開催されることになりました。
今回見せていただいたドールハウスのほかに、さまざまなアウトドア・シーンを再現したジオラマ作品も登場する予定です。

(キャプション)個展開催に合わせて制作したフォトブック。木和さんの25年以上にわたる創作の歩みをたどることができます


「通常はガラスケースに入れて展示されることが多いのですが、今回はできるだけ近くで楽しんでいただけるように、ケースなしで展示することにしました。ルーペも用意しておきますので、細部までじっくりご覧くださいね」と温かいメッセージも頂戴しました。

ドールハウスやミニチュアを作ってみたい方に朗報!教室も開催

そして、わたしたちはこの日、木和さんのアウトプット計画に続きがあることを知りました。12月から毎月第2・第4金曜、個展会場と同じ「Space7」で木和さん主宰の「ドールハウスとミニチュア教室」が定期的に開かれることになったのです

ドールハウスやミニチュアを作ってみたいけれど、不器用だから自信がない、何から始めてよいかわからないという人が多いのではないでしょうか? 木和さんは、そんな人たちに向けて、長年積み重ねてきたノウハウを提供し、ハンドメイドの楽しみを共有する場を設けようと考えました。

「比較的簡単なミニチュアフードなどを題材に、道具の使い方や加工の仕方などをわかりやすくお伝えしたいと思います。初心者の方も大歓迎ですので、ご興味がある方はぜひ!」とのこと。申し込み方法など詳細を知りたい方は、個展会場で木和さんに直接たずねてみてくださいね。

尽きることのない創作意欲、次は「風を作りたい」

木和さんは個展や教室といったアウトプットの活動のかたわら、これまで通り、「自分がつくりたいもの」を追求していく構えです。特に挑戦してみたいテーマを伺ったところ、「『源氏物語』の第28帖『野分(のわき)』の1シーンです」という明確な答えが返ってきました。

木和さんが思い描くのは、強風が吹きあれるなか、光源氏の息子・夕霧が紫の上の姿を垣間見る、『野分』を代表する名場面。木和さんはそのシーンを通して「風を作りたい」と言います。

(キャプション)極細ワイヤーで作る鳥カゴは、木和さんのお気に入りのアイテムです


「今までいろいろな“形あるもの”を作ってきて、今度は風のような“形のないもの”にもチャレンジしたいなと。立体で表現するのは非常に難しく、実現できるかわかりませんが、完成した暁にはまたご覧に入れたいと思います」

『野分』の名場面をはじめ、木和さんがこれからどんな作品を生み出していくのか、非常に楽しみになってきました。まずは近日開催予定の個展に足を運んで、木和ワールドにどっぷり浸かってみましょう♪

■■■Information■■■
atelier CLOSET「ドールハウスとミニチュア展」
期間:2021年11月12日(金)〜16日(火)
会場:長岡京市長岡2丁目22-27 Space7
※阪急長岡天神駅「西口」から徒歩7分
時間:10:00〜17:00
料金:入場無料
★atelier CLOSET Instagram👇
https://www.instagram.com/atelier_closet719/?hl=ja

★セブン商店街があなたのチャレンジを応援!レンタルスペース「Space7」

撮影:菊地佳那

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