【前編】多刀流が今どき・スキルが輝く市民活動

長岡京市は、2022年10月に市制50周年を迎えます。「50年の歩み」を振り返りながら、長岡京市の「今」をご紹介。市民の未来につながる取り組みや思いを感じていただければうれしいです!

当記事は、広報紙「長岡京ライフ3月号」に掲載されている市制50周年記念特別企画「未来につながる 今をつたえる」との連動企画になります。かしこ暮らしっくサポーターが企画・取材・執筆しています。「長岡京ライフ3月号」はこちらからチェック↓

長岡京ライフ3月号 http://www.city.nagaokakyo.lg.jp/0000011002.html

こんにちは、市民ライターの小野です。新型コロナウイルスの流行で、地域で過ごす時間が増え、私たちの住む地域にあらためて目を向けた人も多いのではないでしょうか?今回のテーマは「市民活動」。言葉のイメージは敷居が高そうですが、できる範囲で地域のことを楽しみながらすることなんです。その魅力を2回にわたってお伝え。前半では市民活動の専門家へのインタビュー、後半ではコロナ禍をきっかけに市民活動を始めた方の実際の活動を取材してきました。

※新型コロナウイルスの感染拡大前に撮影した写真も掲載しています。


縁遠いと思っていない?意外と知らない市民活動の今

身近な場所に活動のきっかけがある

南丹市で「南丹市まちづくりデザインセンター」を運営する特定非営利活動法人テダス理事長高橋博樹さんにお話を聞きました。高橋さんは長岡京市在住です。今回は、長岡京市 市民協働部 自治振興室で市民活動を担当する赤松主査も参加してくれましたよ。


―赤松さん、「市民活動」という言葉は四字熟語で難しく感じてしまうんですが、具体的にはどんなことでしょうか?

赤松 お気持ちはわかります(笑)。広い意味で言えば、市民の活動は全て市民活動ということができます。大きく2つに分けると、①趣味を楽しむサークルのような活動②まちづくりに関わる活動です。市民の皆さんが、無理せず楽しめる範囲でまちづくりに関わる活動をしていただくと、より暮らしやすいまちになっていくのではないかと思っています。そこで、市民の皆さんの活動を支援しようと、市では補助金制度やサポートする体制を整えています。

キャプション)高台自治会防災散歩の様子


―市民が何か始めたい気持ちを、行政がサポートしてくれるんですね。

今日は、南丹市で市民活動を支援している高橋さんにお越しいただいています。ご自身も市民活動をされてきた高橋さんが中間支援のNPO法人を立ち上げたストーリーをお伺いしてもいいですか?

高橋 大学を卒業後、都市計画をする会社へ就職しました。阪神淡路大震災後の神戸のハード・ソフト両面のまちづくりに関わりました。その後、木工家になりたいと夢を持ち、南丹市の京都伝統工芸大学校へ進学。卒業後は独立しましたが、それと同時に高い技術を持っている職人の仲間たちの、約9割が卒業後の進路がなく全く関係のない仕事に就くことが気にかかりました。そこで、学校を卒業した職人の集まりのOB会として『NPO法人京都匠塾』を2006年に設立し、学校に残り教員として働きながら、 NPOを運営しました。NPOという存在がまだ珍しかった頃で、同じように「何かしてみたい」と想いを持った人たちがやり方を知ろうと私の元を訪ねてくるようになりました。

キャプション)「南丹市まちづくりデザインセンター」の活動


―その活動が個人の支援からNPOの支援へと広がっていったんですね。

高橋 当時、南丹市では、近い時期に3つの分野が違うNPO法人が立ち上がっていたので、その代表同士でNPOを支援する相談窓口を作ろうという話になり、南丹市にも提案したところ、市も同じようにNPO支援の必要性を感じていたので2012年にNPO法人テダスを設立し、「南丹市まちづくりデザインセンター」を運営するようになりました。そこから、市民活動の研究、NPOとは?と考えるようになりました。

キャプション)高橋さんは、 NPOの中間支援、木工家、教育活動等、多面的な活動をされています。


―高橋さんのお話を聞くと、まさに「市民活動を通して想いをカタチにし続けてきた人」という印象を受けます。凄すぎて遠く感じてしまいますが、今日は遠慮なく質問させていただきますね!


始める時に大切なのは「なんのため」。純粋な目的意識を問いかけて

―高橋さんのところには、多くの「何かを始めたい人」が相談に来ると思いますが、まずはどんなお話をされますか?

高橋 目的意識を尋ねます。「誰を幸せにしたいのか?」です。自分達のためにやりたいと思っているのか?誰かのためにやりたいと思っているのか?内向き/外向きを確認します。お金を稼がなきゃ!と思っている人や、事業計画をガチガチに固めておかないといけないと思っている人、思い込みやバイアスだらけで、そちらに気を取られてしまっている人が多い印象です。そのロックを外して、何のためにやるのか?と話し合います。純粋にお金が欲しいという人なのか、誰かの役に立ちたいけど、お金がなくては生活ができない・・・という考えなのか。後者であれば相談に乗ることができます。一緒に続ける方法を考えていきます。前者の方は、相談相手を間違えています。私はお金儲けは下手なので・・・


―市民活動は「非営利組織だからお金を稼いではいけない」「スタッフも無報酬」のイメージを持っていました。

高橋 そんなことはないですよ。営利組織と非営利組織の違いは、株主に利益を分配するかどうかです。ですから、非営利組織だから、利益を出しちゃいけない、報酬をもらってはいけないというのは、違います。非営利組織も利益を出してもいいんですよ。

キャプション)「南丹市まちづくりデザインセンター」の活動


―その点は私も含めて誤解している人は多いかもしれません。他にも営利組織と非営利組織の違いはありますか?

高橋 営利組織と非営利組織は、目的と手段が逆転しています。営利組織は収益が目的で、事業活動はその手段です。ですから、収益の出ない事業はしません。でも、非営利組織は、事業で課題を解決するのが目的で、収益を出すのは事業を継続するための手段です。

キャプション)「南丹市まちづくりデザインセンター」の活動


―何かしたいと思った時に起業を含む「複業」という手段もありますよね。社会課題の解決のために起業したいという人が増えています。

高橋 課題を解決したいという起業は「非営利型起業」ですね。対になる言葉として「ビジネス型起業」があります。ビジネス型起業は雇用者に責任を持ちますし、継続・拡大を目指します。一方で非営利型は、組織に属する全員が個人事業主のような意識で、課題が解決されたら解散することを目指します。


―環境問題に取り組んでいる非営利型起業なら、環境問題がもし解決したら解散するというイメージですね。何かを始める時には、ビジネス型起業にするのか、非営利型起業にするのかを自分の中でしっかりと確認しておくことが大切ですね。

高橋 始める時に、そこをしっかりと決めておくことで、迷いません。南丹市では非営利型起業でも収益を出して、対価をもらっていい、という意識が浸透してきました。大きな会社組織に入ると距離ができてしまい実感しにくいですが、誰かの役に立つことと稼ぐことは本来セットです。起業というとスポ根の世界のように勝負をかけないといけないと思っている人が多いですが、月に1度地域の中でイベントをするのも立派な起業ですよ。

赤松 どの方法を選ぶかは、考え方と事務的な整理の仕方の違いなのかもしませんね。どんな関わり方でも地域で何かに取り組んでくださるというのは、素敵なことだと思います!


自分ごとで考え、動く人が増えると強く元気な街になる

―高橋さん、市民活動が活発になるとどうなりますか?

高橋 元気なまちになりますよ!僕が定義している「元気なまち」は「やりたいと思った人がすぐに動ける状態」のこと。逆にいうと、何かをしたいと思っても、どこに行ったらいいのかわからなかったり、できるイメージがつかなかったり、反対されたりして、動きにくいのが病気の状態です。

赤松 女性の働き方で迷ったときに、会社にさまざまなロールモデルがいて、アドバイスをもらえて、応援してもらえたら心強いですよね。市民活動も、まさに同じですね。

キャプション)「南丹市まちづくりデザインセンター」の活動


―それはわかりやすいですね!南丹市は、市民活動が活発だとお聞きしますが、なぜでしょうか?

高橋 南丹市には人口減少や災害のリスクに対する危機感があります。子育て環境をもっと良くしたいと子育て中の女性が、相談に来ることも増えていますよ。行政ができないことは自分達の手でやろうと、自然と考えている人が多いですね。僕もNPOの中間支援団体として、「自分ごととして考えよう」とよく伝えています。知識も大切ですが、まず熱意が大切です。昔は地域のことは地域でという意識が自然にありましたが、都市化が進み、通勤するサラリーマンが増えたことで、昼間は地域にいないので、行政に地域のことを任せてきました。市民活動をするというのは、行政に追いやってきた仕事を、地域に取り戻すということです。取り戻すと地域が強くなりますよ。


【タイプ別:リーダータイプとサポートタイプ】市民活動をスタートするには

リーダーは苦手だけど、誰かの助けになりたい人には既存の団体をマッチングするサービスを活用して

―筆者も地域のために活動したいと思ったことはありますが、リーダーになりたくない気持ちが大きいです。私にできるかな?と不安で・・・。でも、人を応援したい気持ちはあります。

赤松 J R長岡京駅前バンビオの1階には、長岡京市市民活動サポートセンターがあります。市民活動団体登録していなくても、個人で相談に行っていいんですよ。時間ができたのでボランティアをしたいという人はよくいらっしゃいます。希望にあう活動をしている団体があれば、マッチングしてもらえますよ。市民活動サポートセンターに登録されている団体は、159団体あります。(2022年1月現在)

キャプション)子育て中の画家と知育講師が、親子に季節を感じる工作や探究型の学びの場を提供する「おやこみらいZOO」


―そんなにたくさんあるんですね!もし、自分の取り組みたい内容とマッチする団体がない場合はどうしたらいいのでしょうか?

赤松 ぜひ立ち上げにもチャレンジしていただきたいですね。活動を応援するための助成金や、相談先がありますよ。


団体のスタートは数人の仲間からでOK。スモールステップでやってみよう

キャプション)当事者目線で細やかにニーズをすくい上げ、参加者に寄り添った企画を実施できるのも市民活動の魅力


―団体を運営するのって難しそうです。市民活動団体の立ち上げでつまずきやすいパターンはありますか?

高橋 いきなり大きいことを始めたいという場合ですね。まだ、何もしたことがないけれど、いきなりプロリーグを目指したいというケースです。大きい目標を抱くのはいいことではあるんですが、そのせいでなかなか準備が整わず、スタートが切れない。

赤松 まだ活動をしていないのに、いきなり大きなことをしたいとなると、実現までの道のりが描きにくいですね。

高橋 まずは、家族とやってみるとか、2−3人の仲間でやってみるのがいいと思います。いきなりプロリーグを目指すのではなく、キャッチボール、草野球、プロリーグとステップアップしてもらえるといいと思います。まずは自分の現在地を知るのが、1番目のステップです。

キャプション)「南丹市まちづくりデザインセンター」の活動


―会社組織で活躍した経験があると、ついつい私はこれができます、と大きなことを言いたくなってしまいますが、会社を離れて、一個人として地域でできることは限られていますね。筆者もギャップを感じた経験があるので、共感します。

高橋 初めは、誰でもわからないので、大丈夫。アドバイスをする人が、どれだけ細かいステップを作って寄り添うかも大切です。


自分とは違う誰かの目で、地域の困りごとをリサーチしてみよう

キャプション)地域密着の子育て情報誌「ママパスポート長岡京」を発行するOTOKUNIレザミ


赤松 退職後に時間のゆとりができたので、地域のために何かしたいけど、身近に活動の場が見つからないという声も聞きます。例えば、子育て世帯には、助けを必要とする人が多いと聞くので、そのミスマッチがあります。


―やりたいことと、求められていることのズレがあるんですね。

赤松 何か始めたいと思っている人は、マーケティングのような視点が必要かもしれません。地域にはさまざまな人がいますので、別の視点から可能性が拡がるアドバイスをもらえるといいですよね。また、今自分の好きなことで市民活動をしている人は、実はそのスキルが人の役にも立つと気付けると、活動のフィールドがぐんと広がると思います。

キャプション)「南丹市まちづくりデザインセンター」の活動


―高橋さんのお話の中で、偶然の出会いから応援され、ネットワークと共に活動の幅が広がっていった印象を受けました。行政や異業種の団体と協働する際のポイントはありますか?

高橋 ある種のバランス感覚は大事にしています。誰かが得したら、誰かが損するというふうには考えず、僕と相手の得は一致していると考える。僕が面白いと感じる基準は、「それが誰かの役に立っているか?」なのです。


多くの人が高橋さんと協働したいと思う秘訣は、このバランス感覚にあるのだろうな、と感じました。何より、楽しそうにお話ししてくださる高橋さんに、「何かしてみたい!」と前向きな気持ちになりました。高橋さん、赤松主査、どうもありがとうございました!

後編では、整理収納アドバイザーの講師として活動している小林志保さんにお話を聞きます。どうぞお楽しみに!

キャプション)NPO法人テダス理事長高橋さんと赤松主査


市民活動サポートセンターと市民活動応援補助金

長岡京市では、市民活動を応援しています。どなたでも利用できる窓口として、J R長岡京駅前のバンビオ1階に市民活動サポートセンターがあります(通称サポセン)。地域のために非営利活動をしたいと思った方は、ぜひ一度相談に訪れてみてくださいね。(サポセンでは、起業相談は行っておりません)団体登録をすると、会議スペース・印刷機など備品の貸し出しを受けられ、チラシを配架してもらうことも可能です。登録団体の知識向上のためのセミナーも開催されています。(サポセンについては、「広報長岡京L I F E 」2022.3月号9Pでも紹介しています)

また、市民活動を充実させるための補助金もあります。2022年度の補助金制度の説明会と今年度補助金を交付した団体の活動報告会がありますので、興味のある方は、ぜひご参加ください。

日時 : 3月13日(日)午前10時〜11時30分 
場所 : バンビオ 
申込:3月10日(木)までに自治振興室 市民参画協働担当 075-955-3164
補助金の活用方法や申請書の書き方、活動の相談などは市民活動サポートセンター(075-963-5505)へ。


NPO法人テダス

★問い合わせ先 0771-68-3555

★アクセス 京都府南丹市園部町美園町7号9-1 

南丹市まちづくりデザインセンター内

★営業時間 AM 10:00 - PM 18:00

★休業日  日、月、祝日

★ホームページ http://tedasu.com/index.html


長岡京市市民活動サポートセンター

★問い合わせ先 075-963-5505

★アクセス JR長岡京駅前

★営業時間 月~金 09:00~18:00

                     土日祝 10:00~15:00

★ホームページ http://bambio.jp/nijit/


後編の記事はコチラから!

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