阪急長岡天神駅から歩いてすぐ。セブン通りに立つ創業40年の和菓子店・喜久春さんに予約注文が殺到しているクリスマス和菓子ケーキがあるんだとか。どうしても読者の皆さんにご覧いただきたかったので、師走のお忙しい中、特別に作っていただきました!!
え!?これが和菓子??大人気の和菓子ケーキ、マジックのような製造工程に取材スタッフは釘付けに!
長岡京代表銘菓を作る和菓子店
喜久春さんといえば、長岡京市のご当地スイーツの一つ「竹の子最中」で有名な和菓子屋さんです。丸いフォルムが愛らしい竹の子最中の穂先を、ちょっと失礼、スパッとカットしてみると、中から顔を見せたのはなんと「竹の子」でした!! え? 竹の子?? 恐る恐る…パクリ。食べてみるとシャキッとした歯ごたえが良い「竹の子の甘露煮」がたまりません。「丹波大納言」「京ゆず」「白小豆」の全3種類を販売しているそうです。
長岡京人のソウルフード・竹の子を大胆にも和菓子にしてしまう喜久春さんの新作は、「クリスマス和菓子ケーキ」。材料は? デザインは? 職人技は?ケーキを担当する女性和菓子職人の由美子さん(娘さん)に全工程を見せてもらいました。
クリスマス和菓子ケーキのパーツを用意。この時点ではシンプルですね。どのように変身していくのでしょうか~!ワクワクしますね。
まずは、あらかじめ作っておいた、左上の「きんとん」をカットして竹製のこしきで力いっぱいこしていきます。小柄な由美子さんが全体重をグッとかけ、「お菓子を作るのは結構、力仕事なんですよ(笑)」と一言。やはり食べるだけではわかりません!繊細なきんとんが力仕事だったとは。知らなかった。
こしきを上げると、こんな風なそぼろ状に。これを繰り返して、そぼろを沢山作ります。
和菓子ケーキの土台は、特大サイズのお饅頭です! 中は白餡とこし餡の二重になっているのだとか。「この時に使うのは、きんとん箸という専用のお箸です。これでふんわり、きんとんを壊さないように、でもしっかり付けていきます」。絶妙な力加減でお饅頭に押し付けるようにくっつけていく様子はとても繊細で職人技が光りますね。だんだんリースが出来上がってきました^^
一周、ぐるりときんとんを付け終わったところで次の工程へ。
次に取り出したのは白と赤の練り切り(形を作りやすいように白餡につなぎを加えたもの)。丸い紅白の練り切りを手の平でパンパン! と叩くとあっという間にこの通り。
きゅっきゅっと回しながら白餡を包んでいきます。まるで椿の生和菓子を作っているよう。一つ一つの動きがとても丁寧で美しく、今のところケーキの気配はなく・・・
が、しかし、次の瞬間。あっという間に見覚えのある形に!!変身します。
「はい。サンタクロースの完成です」。
由美子さんの手にかかるとマジックのようにあっという間に形ができあがっていきます。
その次は白い練り切りで白餡を包んで形作り
羊羹で作ったマフラーを付けると雪だるまが出来上がりました。雪だるまは全部、練り切り製ではないんですね。
「マジパンのように形だけを作るのもいいとは思うんです。でも、この方が食べた時に『中にこし餡が入ってる!やっぱり和菓子なんだ』と喜んでいただけるんじゃないかなと思って」。随所に由美子さんの和菓子と食べる方への愛が感じられます。
今度は黄色の練り切りで白餡を包み(左上)、丸く形作ったらポンと穴をあけます(右上)。小さくて白い「いら粉」を付けたら(左下)、寒天で作った柊を載せて完成。クリスマスらしいパーツが揃ってきました。
ところで先ほどから何度も出てくる「練り切り」。つなぎに餅粉だけや小麦粉を入れた「こなし」という生地を使うお店が多い中、喜久春さんでは山芋を薄く切って蒸し、細かいふるいで裏ごしして白餡と合わせて作っています。こんなに丁寧に作るお店は今は少ないのではないでしょうか。
「ですから、うちの練り切りは、とっても滑らかなんですよ(笑)」
いよいよ最終工程。緑の寒天と白い練り切りを重ねて金型で抜きます。こちらも緑一色ではないんですね。
「緑のきんとんの上に置くので、下に白を敷いた方が映えるんですよ」と由美子さん。こういう工夫の積み重ねが、可愛らしさと上品さを併せ持った和菓子になるのですね。
完成間近!どんどんデコっていきます
さて、先ほどの雪だるまとサンタクロースに羊羹で目を描き、さらにサンタクロースには白いヒゲと眉毛までつけていきます。この細工の細やかさ、女性和菓子職人ならではかもしれませんね。
できあがったパーツをセンスよく盛り付けたら完成というところまできましたが、失敗できない緊張感が伝わってきます。ドキドキ…。手際よく作業が進められ…、
ジャーン!わたしたちの和菓子の常識を覆す、超ラブリーな和菓子ケーキの完成でーす!!
間近で拝見していると、1つ1つ和菓子の伝統的な技法を使い、丁寧に愛情を込めて作られているのがよくわかりました。ありがとうございました(><)製造風景に続いては、由美子さんに、クリスマス和菓子ケーキが誕生するまでのお話を聞いてみました。
かわいいだけではない、京都ならでは、喜久春ならではのお菓子を
子供の頃から店の手伝いをしていたという由美子さん。和菓子職人を目指し、他店での修行から帰ってきた時、「朝ドラで和菓子店の話をやっていて、『一生一品や』と言っていたんです。その時、私も喜久春の味は変えずに私といったらコレ! という商品を作りたいと思ったんです」。そこで作ったのが節分用の可愛らしい、お多福さん上生菓子。「父は根っからの職人なので『そんなんっ』って言ったんですけれど、自由にやらせてくれたんです。それがあったからこそ今があると思っています。感謝していますね」。
そうして喜久春といえば、昔ながらの上生菓子がある中で、かわいらしい上和菓子があるとだんだん認識されるようになりました。そんなある日、いつも保育園の帰りに寄ってくれる和菓子が大好きな子の誕生日祝いに和菓子ケーキを作って欲しいとオーダーを受けます。そのケーキをとても喜んでくれたことが、和菓子ケーキ作りを始めるきっかけになりました。
今は由美子さんの代表菓子として薯蕷(じょうよ)饅頭の「タレ耳わんこ饅頭」(左)と「紅白猫饅頭」(右)があります。猫饅頭は、「冬になるとお店の煙突の辺りで野良猫が暖を取っているのをみて、あ!冬と言えば猫だなと思って作ってみたんです」。
作ってみると、和菓子の可能性は無限にあることに気が付き、昔ながらの和菓子も大事ですが、今の人は可愛らしさも求めているんじゃないかなと気が付いたのだそう。
もちろん、あんこを始め材料はこだわり、手間は惜しみません。皮も山芋をすりおろして作っているので、しっとり滑らか。「京都で和菓子店をしている以上、『可愛い』だけじゃなくて、『可愛くて美味しい!』でないとダメだと思っています」。
そんな由美子さん。平成25年に広島で開催された「第26回 全国菓子大博覧会」の工芸菓子部門で何百という出品作の中から見事、文部科学大臣賞を受賞しました。
ほわんと優しい雰囲気の由美子さんですが、お菓子を作る時になると、ピリッと職人の顔になるのが、とても印象的でした。いつものクリスマスケーキに加えて、今年は由美子さんが手作りするクリスマス和菓子ケーキで乾杯するのも素敵ですね(食べるのがもったいなくなりそうだけれど)。
左より弟さんの基文さん、お父さんの喜久治さん、そして由美子さん。「全国、どこへ行っても長岡京なら喜久春やなと言われるようになりたいですね」。
★クリスマス和菓子ケーキ★
大(15㎝) 3500円
小(12㎝) 2900円
注文締め切り12月15日まで
詳しくは電話または店頭にて
■Information□
喜久春
長岡京市長岡2丁目28-40
075-955-8016
9:00~19:00
木曜定休
阪急長岡天神駅から徒歩5分
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